浜松エリアリノベーションサロン 山梨登壇・浜松視察
「浜松エリアリノベーションサロン」のオープニングイベントである講演会が5月27日に浜松であり、弊社代表、山梨が登壇のために招聘を受け、浜松駅へ向かった。
アクトタワーをはじめ、高層ビルの立ち並ぶ浜松駅の改札を出ると、浜松市役所の佐々木氏が出迎えてくださり、リノベーションスクール関連および浜松市の特徴的な物件、サザンクロス商店街、みかわや、丸喜屋商店(三米商店)、新川モール、Dexi等を案内してくださった。サザンクロス商店街を視察した後、車でJR高架下をくぐり北へしばらく移動すると、「みかわや」にたどり着く。この立地は、ディスカッションでもテーマとなった家賃断層の外側にあり、人宿町の事情(昭和通りを境として家賃が下がる)とも重なる。
みかわや/コトバコ:
https://mikawaya-kotobako.com/
交差点の角地にかつてあった三河屋の屋号を引き継ぎ、「新たなコトゴトが起こる場所」になるべくリノベーションされた「みかわや/コトバコ」。信号待ちをしている人々を雨や日差しから守る、きゃしゃで錆びついた柱に支えられた、どこか懐かしいトタン屋根が縁側のような入口スペースになっている。昔日の、断熱効率の明らかに悪い全面サッシが歩道部分と室内とを唯一、隔てる薄いスキンで、トタン屋根のかかる歩道空間と室内空間が一体となっている。
一階部分は食堂と本づくりを体験できる製本所、二階部分はプログラミング自学喫茶や賃貸住居となっている。
代表大端さんに、発酵食をふんだんに使った料理をいただきながら、話を聞いた。大端さんはリノベスクール経験者だそうで、「みかわや」の運営のほかに、工務店への事業アドバイスやHP作成などを業務としている。
「みかわや」は、行政からの経済的サポートは受けておらず、リノベは自社で行い、転貸、店子の事業サポートなどをしている。一階店内は、化粧材をはがされてむき出しの野縁や間柱などがいいリズムと素材感を与えている。一部に使われている斜角に貼られたトタンと木のコントラストが美しい。ちなみに床はモルタルが敷かれているが、防水シートが張られていないため湿気が上がってきてしまい、壁にも断熱材が張られていないので寒い、サッシについては言わずもがな、だそうだが、資金に余裕が出てきたらそういった性能向上に投資するそうだ。どのようにそれらが施工され、そして変化していくのか、大変興味をそそられる。
「みかわや」向かいの木造家屋も現在リノベ中で、天井や壁の仕上げ材がはがされ骨組みのむき出しになった荒々しい、しかし雰囲気のある「場」となっている。こちらも完成が楽しみである。
丸喜屋商店(三米商店)
かつては魚屋町として賑わった界隈の一つ、大正時代に海産物問屋として創業した三米商店横にある、昔は住居として使われていた建物を内覧させていただいた。白いタイルの貼られた土間空間や、あがりの二部屋の奥に坪庭の見える、なんとも興味深い建物だ。
大家さんは将来的に、有効活用してゆきたいと話していた。
新川モール
新川モールは、リノベーションスクール企業版をきっかけとして、プロジェクトが進みだしたそうだ。
https://www.shinkawamall.com/
木質感と土感のあるマテリアルの空間を風が颯爽と吹き抜けていく広々としたそこは、街ブラしていると気づかぬうちに、そちらに足が向いてしまっている、そんな場だ。
都市の中では邪険に扱われがちなインフラをダイナミックな構成要素として捉え、高架下は駅前に林立する浜松の構想ビル群を借景としており、それらに囲い込まれるような感覚も覚えた。思うに広場の囲い込まれ感などはヨーロッパの広場(例としてシエナのカンポ広場)を彷彿とさせ、インフラの活用は上海の高架を思い出させた。ここでは、少々大げさにいうのであれば、その二つがうまく融合されているのではないか。
浜松エリアリノベーションサロン
https://hama-rino.com/
エリアリノベーションサロン講演会では、弊社代表、山梨が、まず登壇した。その要点を以下にまとめる。
・人宿町のエリアリノベーションについて歴史的な説明: 創造舎、人宿町の旧銭湯へ入居 → 映画館の閉鎖からアトサキセブン → OMACHI創造計画 I・II・III
・建物の買取 → 改修 → 貸出
・店舗の誘致 → 酒を提供することの重要性
・薄暗い町のイメージに、光を導入することによって明るいイメージへ
・共同ごみ集積場のような、エリア共用施設
・匠宿と丸子宿、あるいは里山の開発:人宿町と丸子宿を東海道でつなげられないか
アフタヌーンソサエティー代表 清水義次氏、スピーチのまとめ
・きっかけは表参道のエリアマネジメント
・リノベーション街づくりの歴史:家守コンセプト → 小倉のリノベーション街づくり
・エリアプロデューサー、マネージャーを育てていきたい → 地域に対する愛着が必要
・家賃断層帯を探せ
・浜松市の可能性 → 気候、食材、川と海、山
・人宿町と山梨の手法の評価 → 経済的持続性、地域のニーズ汲み上げ、ウォールアートの存在
浜松市長 鈴木康友氏、スピーチのまとめ
・浜松市の紹介、中心市街地の衰退 → エリアリノベーションサロンを通して建物の価値とコミュニティーの再生、家守としての人材を育てたい。
・浜松のリノベーション事業紹介
ディスカッション
目的
情熱はやがて文化になる→文化を育てることの重要性(例:赤福とおかげ横丁の紹介)
・こういったような町にしたいというような参照例はあまりない→地方の誇り、人宿魂
・欲張らない、適宜な幸せ感があればいいのでは
戦略
・家賃断層発見の重要性:人宿町、浜松のみかわや立地地域
・駐車場 → コインパーキングの積極利用(山梨)、ダブルファサード(車の駐車場が町の入り口)(清水氏)
技法
・人宿町では店子を誘致するために箱は創造舎で用意した。 → 店子は飲食店が多いが、飲食店という業種柄、横のつながりが強い。家主の良い噂は口伝えで広がった。
・業態は自分の好きなものを誘致するべき。 → 酒を売ってなんぼ → 利益が出たら、オーガニックの店などを誘致していくべき
・浜松、サン・セバスチャン構想 → 多様な食を中心とした街と郊外の農業、漁業などとの連携
今回の講演では、エリアリノベーションの俯瞰的な歴史・可能性、創造舎による人宿町での実践の概要を聞くことができた。質疑では、実際に家守になった場合に直面するであろうケースを想定したものが多かった。また浜松に対する愛着がこれからの街づくりの原動力となるであろう予感を、会場からも、登壇者からも、感じるものとなった。