開発から取り残された街が面白い 社員旅行2022 Vol.2
NIPPONIAの宿泊施設の集まる河原町近くは、篠山口駅からは車で15分ほどかかる。つまり、少々駅から遠い。そして、この地域は開発から取り残されていた、という話を聞いたことがある。鉄道が街の近くを通過することを拒んだために、その経済的効果を享受する機会をみすみす逃し、繁栄から取り残された、という街のことを昔はよく聞いたけど、篠山市街もそのうちの一つだった、ということだ。しかし、時代の気分はどのように変わっていくのかわからないから面白い。
昔日の面影を強く宿すいくつかの「取り残された」街並みは細々と生き残ってきた。そして、いま、蘇りつつある。そのうちの一つである丹波篠山では、NIPPONIAの事業によって街は再活性化し、今や街づくりの先端をゆくモデルケースとなっている。創造舎としては、それを実体験してみたい、そんな旅でもあった。
ところでヨーロッパへ目を向けると、アクセスは難しいが古い街並みが残されていて、ツーリストを惹きつけている街は多い。記憶に強く残っている街をいくつか挙げてみる。
まず最初に、ドイツのディンケルスビュール(Dinkelsbühl)。バイエルン州中央にあり、ロマンチック街道の街の一つでもある。車がないとなかなか辿り着けない。自分はたしかバスを乗り継ぎ、5時以降は帰りのバスさえなかった記憶がある。
この街には都市壁が現存し、個人的に都市壁マニアのミュンヒK(筆者HN)には垂涎もののThe中世都市。都市壁の散歩道に沿って移り変わる街とランドスケープの美しさは忘れられない。
ドイツでは三十年戦争の時に自衛のために都市壁を持つ中世都市が多く出現した。しかし、戦争兵器の発達、交通の発達、都市の拡張など、多くの弊害が生まれ、近代になって撤去されてしまった都市壁も多い。
また、第二次世界大戦の爆撃にさらされ破壊されてしまった都市もある。そんな中で、今でも中世の面影を強く残す、このディンケルスビュールは貴重な街でもある。
環濠に泳ぐコイを食すコイ祭りや、30年戦争時に街を救った子供たちを記念したフェスティバルなど、イベントも多い。
フランスのサン-ポール・デ・ヴァンス(Saint-Paul de Vence)は大都市ニースの近くにあり、シャガールをはじめ、多くの芸術家を惹きつけた。こちらもニースからバスで30分ほどかかる。
丘の上に立つ姿がコート・ダジュールの碧い空に映える。
小さな街の、石で囲まれた小さな通りには、やはり小さなお店が並び、街中を歩くだけでハッピーな気持ちにさせてくれる。
最後に、イタリアのサン・ジミニャーノ。トスカーナ地方の、林立する塔が有名な街。周辺は白ワイン、ヴェルナッチャを生み出すブドウ畑が広がる。ちなみにヴェルナッチャはヴァナキュラーに由来するという説もあるそうで、都市とヴァナキュラーの関係に思いを馳せるにはもってこいの街だ。
街の中央を走る街路を抜けて、広場に面した坂道にあるお店のジェラートがとんでもなくおいしかった。
開発から取り残されたのは、今となってはラッキーだった。そうして残された歴史や街並みは、次世代に繋いでいかなければならない。