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そして、その風景に会いに行く 社員旅行2022 Vol.5

個人的な話になるが、ミュンヒKは、二十年ほど前、ある事情により篠山に滞在したことがある。今回、偶然、社員旅行で篠山市を訪問することとなり、急遽、当時お世話になった篠山在住の建築家MK氏に連絡を取り、約20年ぶりの再会となった。久しぶりだったけど、あまりお変わりなくお元気そうだった。

丹波焼 コーヒーカップ ©創造舎


氏が車で「行きたいとこに連れて行ってやるよ」というので、丹波焼関係のものを見たい、そして、改装したというMK氏自宅+事務所棟を見せてほしい、といった。恥ずかしながら、今回の旅では創造舎M氏のオーガナイズに任せきりで、自分ではほぼ何も調べてはこなかったのである。
まず連れて行ってもらったのは、王子山焼の窯元。河原町妻入商家群の裏に王子山があり、ここに江戸時代末期に藩窯が築かれた。しかし、廃藩置県にともなって廃窯。その後、有志が集まって窯を復興し、現在に至る。
https://ojiyamayaki.com/
個人的にその美しい色はとても気に入ったが、残念ながらフォームが響いてこなかった。色は妖艶な白磁、青磁で、色深度の滑らかな違いが美しい。陶器は工房の裏にある窯で焼き上げられている。

登り窯 ©創造舎


その後、見せてもらったMK氏宅のキッチンには、王子山焼の照明シェードがあった。釉薬の色トーンだけではなく、素地の厚さにより生み出される美しい光のグラデーションがきれいだった。

王子山焼シェードランプ ©創造舎


以前の記事でも書いたように、黒豆を代表とする食の文化も根付いており、こだわりをもってつくられた農作物を使うレストランも多いと聞く。猪の肉料理も有名で、秋の終わりから冬の始まりにかけて食べられるらしいが、同僚は昼食に猪の肉(冷凍)料理を食べたという。

オフザレコード壁 かつては和菓子屋だった店舗を改装 ©創造舎


また、NOTE本部の隣の建物、通り沿いに建つ古民家をリノベーションしたハンバーガーレストラン、オフザレコードではバーガーに有機野菜を使っており、そこで昼食をとったM氏とS氏が大口を開けてバーガーに食らいつく写真がグループラインで送られてきていた。
https://www.instagram.com/_.offtherecord/

オフザレコード ©創造舎


ミュンヒKはというと、妻入商家群のある河原町通りの近くに、小田垣商店という黒豆専門店があり、ここでMK氏と昼食をとった。ここは杉本博司氏がリノベーションしたそうで、氏の計画した庭を見ながら黒豆と地場野菜を使った料理を食べた。

小田垣商店 庭 ©創造舎

小田垣商店 黒豆 ©創造舎


食後、レジカウンターに並ぶ丹波篠山の本が気に入ったので購入することにした。すると、会計してくれた女性が「篠山にご在住ですか」と話しかけてきた。曰く、その本は、篠山ビギナーはあまり購入しない本とのこと。たしかに、ミュンヒKは微妙に篠山ビギナーではない。しかも、隣に立つMK氏は、この地域の古民家の少なくない数を改修している建築家でもある。そのあたりのことを手短に話すと、彼女は、小田垣屋の会員カードを差し出した。「自分は、篠山にはあまり来ないので」といっても、手を引っ込める気配がない。そのちょっとしたカタクナな態度にお互い笑ってしまった後、カードは頂ておくことにした。
https://www.odagaki.co.jp/

本をきっかけとして、さざ波のように、こんなコミュニケーションが生まれてしまう。この時は当たり前のことだと思ったけど、他の街で本を買ったときに、書店員さんとあんな会話、したことないなって気づいた。きっと、彼女にとってはこれが日常の風景。丹波篠山にとっても。

この風景に、またふらりと、会いに来たいと思う。